古銅水滴・「子犬」

                古銅水滴・「子犬」
 
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 今から25年ほど前、書道家を夢見ていた頃、地元の古道具屋のショ-ケ-スの片隅にポツンと置かれていたものである。一寸(約3センチ)ほどの手の中になじむ古銅の水滴で、古道具屋のじいさんの言うことでは、前の持ち主は目の悪い人だったそうで、撫でさすっていたそうである。水切れ(水滴はこれが肝心)もよく、テストパイロットが買い気を見せると、そこは老獪で百戦錬磨の古道具屋のじいさん、「二度と出えへんで、持っときなはれ、2万と5000両でどうや」とたたみかけてきた。
 今は、硯で墨をすることも稀になったが、なぜかしら、この子犬の水滴を撫でさすることがある。