歌舞伎余話 年に一度の「歌舞伎衣裳の虫干し」

          年に一度の「歌舞伎衣裳の虫干し」
 
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 農村歌舞伎は、舞台だけでは催せません。桟敷、高座(楽屋や化粧室)、鬘や衣裳、根本や大道具、小道具などを収蔵する衣裳蔵が必要です。舞台だけが国指定重要有形民俗文化財に指定されているだけでなく、桟敷、高座、衣裳蔵も指定されています。
 衣裳蔵には、寛政五年(1793年)紀年をはじめとして620点あまりの歌舞伎衣裳が町指定有形民俗文化財として保管されています。
 これら歌舞伎衣裳は9月中頃、老人会の皆さんの手で桟敷に綱をわたして虫干しが行われます。
 しかし、天気がよく、老人会の会員の皆さんの都合がよくなければ行われないため、日程は不定期で、運良くこの虫干しの風景を見ることのできる人は、地元でも限られています。
 江戸時代からの歌舞伎衣裳を間近に、手にとって見ることができる「虫干し」は、歌舞伎研究者のみならず、カメラマン垂涎の催し物です。
 ちなみに江戸時代、歌舞伎衣裳は役者持ちでした。公演が終わると売りに出し、新しい役のための衣裳を買い求めたため、大坂道頓堀には歌舞伎衣裳専門の古着屋が林立していました。
 これら歌舞伎衣裳は、伊勢参りや仕事で上方を訪れた島民が大坂で買い求めた物です。
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 江戸時代の、金糸銀糸を使った豪華な「四天」などは、もう製作できないものだそうです。
 年に一度、それも何時間だけの農村歌舞伎のために、舞台を、桟敷、衣裳、そして役者を守り育てていく。それも自分たちが労力とお金を出して・・・
 今の日本の社会が、そして私たち日本人が、忘れ去ってしまおうとしている、あるいはすでに忘れ去ってしまった「何ものか」を、この小豆島土庄町肥土山地区は伝えている・・・毎年5月3日の農村歌舞伎を観る度に、テストパイロットは思うのです。
 
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