『師と仰いで40年 田中岑先生小品展ー①』

『師と仰いで40年 田中岑先生小品展ー①』
 
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 洋画家の田中岑先生を師と仰いで今年で40年になります。その節目、陋屋に飾って楽しんでいる田中先生の小品8点で『田中岑先生小品展』を企画しました。 
 
 
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                                             タイトル              
                      『霧の中』      
                                                                  
                  原画の作者 田中 岑(川崎市在住・観音寺市豊浜町出身)
                              壁画の大きさ縦2.85m×横10.62m
                                          作成日時 1994年3月
 
 
 
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田中岑先生
TANAKA TAKASHI
 
1921 香川県三豊郡和田村(現・観音寺市)に生まれる。
1939 第9回独立美術協会展『自画像』が初入選(以降、10,12,15回)。東京美術学校    油絵科入学。海老原喜之助に出会い、新設された日本大学芸術学科へ転ニャ烏。海老原喜之助、岡田謙三、朝井閑右衛門、柳亮、滝口修造らに師事。
1941 グループ「昴」結成に参加。銀座の紀伊国屋で展覧会。
1942 フレスコ壁画組合展(日動画廊)初個展「田中岑油絵フレスコ作品発表展」(神戸元町斉美工芸協会)。日本大学芸術科を繰り上げ卒、郷里の丸亀連隊に入   隊、終戦を中国で迎える。
1947 上京。雑誌『ダンス』(近代社)の編集に携わる。文学に深く傾倒する。第11回自由美術協会展(『食慾』東京大学所蔵)第1回日本アンデパンダン展。
1948 互助組織「学徒実践同盟」に参加。この運動の中で出会った物理学者北川英夫を知り、空間の力学的調和という認識を得る。文化服装学院出版局に勤め、   雑誌『装苑』編集に携わる。
1949 第1回読売アンデパンダン
1950 第27回春陽会展第1回研究賞受賞。JAN展JAN黎明賞受賞。
1951 春陽会準会員。坂東勇太郎編の小冊子『田中岑の絵と人』刊行
1953 春陽会会員。奥村伊津と結婚。最初のアトリエを世田谷赤堤「地中海」社内に持ち、高輪正源寺より移転。雑誌「地中海」同人となる。滝口修造選定によ   る個展開催(タケミヤ画廊、作品は香川県所蔵)「抽象と幻想」展(東京国立近代美術館
1954 長男玄誕生。若杉慧「禁断」、壇一雄石川五右衛門」、丹波文雄「飢える魂」、新田次郎「蒼氷」等多数の装丁を手掛ける。
1955 第18回国際水彩画ビエンナーレ(ブルックリン美術館)。「今日の新人1955年」展(神奈川県立近代美術館)、同公開座談会。第1回JANインターナショ   ナルふらんすクリチック絵画展(1957年第2回)。
1956 第2回現代日本美術展『海辺』(東京国立近代美術館所蔵)、『丘原』(神奈川県立近代美術館所蔵)。1956年度ベストスリー・土方定一選(読売新聞)。田   中岑・五味秀夫・斎藤正夫3人展(兜屋画廊)。第1回シェル美術賞展『丘』2等賞
1957 第1回安井賞受賞『海辺』具象絵画の在り方をめぐり物議を醸す。第4回日本国際美術展『記憶』(以降5,6,7回)JAN同人とともに都立日比谷図書館の壁   画を共同制作、『自由と良識』を担当。神奈川県立近代美術館食堂壁画『女の一生』制作
1958 安井賞記念受賞作家油絵展(梅田画廊)「日本のホープ」田中岑(TBSTV)メキシコ国立現代美術館現代日本美術展(南米巡回)。オーストラリア・ニュー   ジーランド巡回日本現代美術展(外務省・東京国立近代美術館毎日新聞社主催)。神奈川県立近代美術館壁画作成。
1959 第5回日本国際美術展『朱新』(モントリオール最高裁判所所蔵)個展(兜屋画廊、60年)青猫座「鴉」の舞台装置担当。「新短歌選集」1959年版に「冬」14   首収録。
1960 JAN4人展(藤井令太郎、田中岑、五味秀夫、斎藤正夫)中南米巡回日本現代美術展。田中岑渡欧歓送展(日動画廊)渡欧(~61)
1962 第5回現代日本美術展、個展(日動画廊、64年)、「朝日ジャーナル」12月2日号表紙となる
1963 第2回国際形象展(~第20回)個展(昭和画廊)
1965 個展(日動サロン、66年、67年)
1966 ユナイト映画『ビーチレッド戦記』(1967年公開)のタイトルバック制作及び出演。フィリピンのルソン島で過す。女子美術大学講師(~69年)
1967 絵本『ひをふくやまとあおいぬま』を安藤美紀夫と福音館から出版。
1969 個展(大阪北浜日動画廊)名古屋日動画廊開設7周年記念展。絵本の原画をブラティスラヴァ(チェコ)での「BIB’69」に出品。
1970 香川県観音寺第一高校70周年記念壁画制作
1972 個展(三越アネックス)、個展(観音寺筒井文祥堂)神戸市民ホール外壁壁画化色彩監修、「朝日ジャーナル」表紙『画家とモデル』、ミュージックギャラ   リー「ふるさとを語る―大平首相との対談」(フジテレビ)
1973 個展「田中岑ふるさとをうたう」(香川県母子休養ホーム・ギャラリー)、個展(神戸貿易センタービル)佐々木静一編『画家の記録田中岑(三彩社)刊行
1975 個展(泉凌雲堂画廊)
1976 個展(ギャラリー・ジェイコ、79,81,83年)
1977 安井賞20周年記念展
1978 堀内正和との二人展(神奈川県民ギャラリー)個展(現代画廊)
1979 手彩色版画集『犬でないいぬ―くうねるのぽくん』『田中岑CATALOGUE』(邯鄲アートサービス)刊行
1982 個展(現代画廊)永井路子毎日新聞連載小説『この世をば』挿絵担当
1983 帝国ホテルのタピストリー制作(龍村美術織物)
1984 個展(ギャラリー・フォレスト、89年)シルクスクリーン版画集『小さな美術館』(邯鄲アートサービス)刊行
1985 個展(ギャラリー松井、88,89年)、個展(ギャラリー・ジェイコつくし野、87,88,89年)
1987 描かれた大和(奈良県立美術館)出展、栗田勇世界日報連載小説『比叡は萌える』挿絵担当(~'90)川崎の自宅を取り壊し新築する(設計田中玄)
1988 「洋画の現在と未来展」(美術世界画廊・ラフォーレミュージアム赤坂)出展
1989 今日の作家たちⅢ―’90田中岑・川口龍夫展(神奈川県立近代美術館)、渡米
1993 香川県立図書館壁画制作
1996 「1953年ライトアップ―新しい戦後美術像が見えてきた」(目黒区美術館
1999 NHK総合テレビ「色の記憶―田中岑」放映、安井賞40年史(財団法人安井曾太郎記念会編)刊行
2000 美術の戦後(神奈川県立近代美術館)、アジア平和美術展2000(恵比寿ガーデンプレイス)に『扉』出展
2001 日本近代美術史・再読(神奈川県立近代美術館)、「アジアから世界へPartⅣ」(ギャラリー美術世界)
2002 安井賞40年の軌跡展、個展「その光の原点」(ギャラリー美術世界)
2003 個展「そして清浄の光は放たれた」(ギャラリー美術世界)
2004 第2回世界平和美術祭典に『トワイライト』を出品(上海劉海粟美術館)
2005 個展「光のニルヴァーナ」(ギャラリー美術世界)
2006 第83回春陽展、透過する光の情景「田中岑・五味秀夫」展(静岡カントリー浜岡ユース&ホテル、カルチャーフロア)
2007 田中坦三&田中岑展(ギャラリー美術世界)
2008 六つの軌跡(新百合21多目的ホール
2011 佐々木静一讃 田中岑・渡辺豊重・海老塚耕一 三人展 (横浜市せんたあ画廊)
2012 アートギャラリー3:シリーズ川崎の美術 田中岑 91層の色彩(川崎市市民ミュージアム
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師と弟子
 
 1989年9月9日から24日まで『田中岑展』が香川県文化会館において開催された。前日の8日、田中先生夫妻を迎えてレセプションが催され、わたしのもとにも招待状が来た。バイクに乗り会場に駆けつけたところ招待状を提示しても、ブーツを履きフルフェイスのヘルメットを持ったわたしは入場を拒否された。やむなく、田中先生を呼んでレセプション会場に入れてもらった。田中先生と奥さんは喜んでくれたが、今思えばアホなことをしたと汗顔の至りである。
 
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                     アトリエにて
                                                             
 上京すると真っ先に目黒区鷹番にある内田義彦先生のお宅を訪ね、それから川崎市多摩区生田の田中岑先生のアトリエにお邪魔して夕食をいただきながら歓談するのが楽しみであった。田中先生は酒をたしなまない。弟子のわたしは酒が入るとボルテージが高くなり、なんにでも憤慨することから田中先生より「憤慨居士」というあだ名を頂戴した。内田先生の「肩書きではなく実力で、作品(本)で勝負」と田中先生の「絵で勝負」というお二人の底流に流れる精神は経済学者と洋画家と分野は違えど同じである。終生の師と仰ぐ人、それも二人もの先生に出会えたのは、貧しいながら仕送りをして大学へ行かせてくれた両親のおかげである。
 昨年6月、六本木の国際文化会館で拙著『奇跡の医師』について話をした際、久しぶりに田中先生のアトリエをたずね歓談した。いつもの快活な先生だった。今年も6月10日に東京小豆島会が明治神宮で開催される。『奇跡の医師』の主人公である頓宮寛先生の話をしてくれということなので上京する。川崎市民ミュージアムで開催の「田中岑91層の色彩展」を見て、師と仰いで40年の田中先生の温顔に接することができる。
 
田中岑画伯、画業一筋六十有余年、御歳九十歳を超えても絵を描き、個展、展覧会を催している。