忘れ得ぬ本と人・『花埋み(はなうずみ)』 渡辺淳一先生

忘れ得ぬ本と人・『花埋み(はなうずみ)』

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 渡辺淳一先生が勤めていた札幌医科大学を辞して東京に出てきたばかりの1969年、なんとか小説家で一本立ちをしようとあがいていた初期の作品である。
女に学問はいらないという風潮の明治初期、医学の道を志した荻野吟子の生涯を描いた作品である。夫に淋病をうつされて離縁された吟子が同じ悩みを持つ女性を救うべく、偏見と障害を乗り越えて女医第一号となる苦難に満ちた生涯を描いた力作である。
 この本を通して、この時期、渡辺先生は、同棲していた女の人が逃げ出し、その部屋を突き止めて斧で窓やドアを叩き割り、駆けつけた警察官に逮捕され留置場に拘留される。それでも懲りずふたたび逃げ出した女性の居場所を突き止め、ドアチェーンを壊して部屋に乱入、再び逮捕されて拘置所に勾留される。一方、札幌から渡辺先生を追いかけてきた女優が渡辺先生のマンションで自殺未遂をはかるなど、愛の修羅場に取り憑かれて狂い回っていたということを知った。
 テストパイロットは、今も座右の本として読み返している。

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 20年ほど前、渡辺淳一先生と林真理子先生を小豆島に迎えて「文藝春秋講演会」を開催したことがあった。渡辺先生は『失楽園』を執筆中、原稿を小豆島から文藝春秋にFAXで送ったことがあった。依頼されたテストパイロットは、原稿用紙を食い入るように読んだ思い出がある。
 テストパイロットが、小説家になりたいと渡辺先生に恐る恐る言うと、この「わたしの中の、もう一人のわたし」と墨痕鮮やかに色紙に書いてくれた。
 いつか、テストパイロットも、このような本を書いてみたいと思っていますが、小心で、「清く、正しく、美しい」生活をおくってきた一穴主義のテストパイロットには、残念ながら無理だと思っています・・・
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