本の紹介

忘れ得ぬ本と人・『花埋み(はなうずみ)』 渡辺淳一先生

忘れ得ぬ本と人・『花埋み(はなうずみ)』 渡辺淳一先生 渡辺淳一先生が勤めていた札幌医科大学を辞して東京に出てきたばかりの1969年、なんとか小説家で一本立ちをしようとあがいていた初期の作品である。 女に学問はいらないという風潮の明治初期、医学…

驚いた!!戦前のイギリスの植民地経営よりも苛烈な東京電力には

驚いた!!戦前のイギリスの植民地経営よりも苛烈な東京電力には 上海内山書店の店主で魯迅の最大の庇護者であった内山寛造の『花甲録』を読んでいると、東京電力の傲慢さ、苛烈さがよくわかった。 内山は、昭和14年に上海の電力料金についてふれて、英国…

『長安 百花の時』・筧文生著、理論的で時論の本

『長安 百花の時』・筧文生著 中国文学の泰斗立命館大学名誉教授筧文生(かけひふみお)先生が、これまで市民講座や講演会、研究会で話したこと、中国での学界でのことなどを書き下ろしたものである。 本書は、Ⅰ、講演記録・Ⅱ、華国紀游・Ⅲ、新歳時記・Ⅳ三言…

岬の分校とちいさな村の物語

昭和23年、映画『二十四の瞳』の舞台となった香川県小豆島にある岬の分校に私はやってきた。「おとこせんせ」「おなごせんせ」と呼ばれる両親と、毎日がお祭りのように賑やかだった分校の日々を綴る、懐かしくてあったかい、とっておきの感動エッセイです。 …

心の傷をどう癒すか・・・『1995年1月・神戸』・阪神大震災下の精神科医たち

心の傷をどう癒すか・・・ 『1995年1月・神戸』・阪神大震災下の精神科医たち http://ec2.images-amazon.com/images/I/71BXwgbt7YL._SL500_AA300_.jpg 1995年 (平成7年)1月17日 ( 火 )に発生した阪神大震災の際、当時神戸大学医学部精神科の…

支那人の「裏と表」・その壱

支那人の「裏と表」その壱 九月に光人社から『奇跡の医師』を上梓して以来、本を読むか、ブログを更新しているか、のどかな日々(仕事は激務、おかげで入院した)をおくっている。 先日、内山完造の『魯迅の思い出』(社会思想社)を再読していると、中国人に…

『職人衆昔ばなし』 斉藤 隆介著 文春文庫

『職人衆昔ばなし』 斉藤 隆介 文春文庫 1959年に雑誌『室内』に掲載され、67年に文藝春秋社から単行本として、79年に文春文庫となったもので、奥付を見ると1979年8月25日第1刷となっている。たぶん大学生の頃に購入したものと思う。 諸職…

『奇跡の医師』、読んでみてください!!

『奇跡の医師』、書店に出回るのは8月27日前後!! 出版社から連絡があり、本屋さんの店頭に並ぶのは27日頃となるという連絡がありました。 単行本で2000円ですが、写真も1902年の鹿児島と桜島俯瞰写真、開校2年目の第七高等学校、明治42年東…

魯迅・「阿Q正伝」・増田涉訳

魯迅は、言わずとしれた教科書にも登場する中国の文豪である。『阿Q正伝』は、魯迅の代表作の一つで、そのころの中国人そのままであるといわれている。テストパイロットは、本書の中におさめられている東北医学専門学校教授の藤野厳九郎を終生の師と仰いだ…

『奇跡の医師』、8月15日発刊です。

『奇跡の医師』、8月15日発刊です。 第七高等学校創設時、明治42年東京帝国大学医科大学卒業アルバム、第一次上海事変など、明治35年から魯迅と内山完造、斉藤茂吉、壺井栄の写真まで、未発表の写真を38ページにわたって掲載しています。 ぜひ、ご…

昭和天覧試合・逆二刀の剣士登場

剣術は、万却の昔から連綿と、或いは幕末に林立したような流派を含めると五百あまりあったといわれているが、二刀流と聞けば、だれもがまず思い浮かべるのは、二天一流の開祖である宮本武蔵であろう。 武蔵の肖像画を見ると、左手に小刀、右手に太刀を持っ…

『近代日本の百冊を選ぶ』・講談社

『近代日本の百冊を選ぶ』・講談社 伊東光晴(経済学者)、大岡信(詩人・文芸評論家)、丸谷才一(小説家・文芸評論家)、森毅(数学者・文芸評論家)、山崎正和(劇作家)という当代一流の人物が編者となり、明治維新からこの方、近代100年の政治・経済…

農村歌舞伎・余話

歌舞伎・根本(ねほん・台本) この根本は、一昨年肥土山農村歌舞伎で催された「義経千本桜 つるべ 鮓屋ノ段」 のものである。 3月になると、5月3日の本舞台目指して、配役が決まり稽古が始まる。 まず手渡された根本を読み込み、台詞を覚えなければなら…

『図書500号記念』・岩波書店

『図書500号記念』・岩波書店 1990年だから20年前のこと。職場の文学好きの上司から、「岩波書店の図書が500号を記念して『本のある生活』というテ-マでエッセイを募集している。興味があれば書いてみたら」と勧められた。 仕事を辞めて書道で…

まぼろしの『お言葉ですが・・・第11巻』 高島俊男

1995年の春、週刊「文春」の辛口コラムで多くの読者を持っていた中学文学専攻の高島俊男さんの本である。2006年夏、突然文藝春秋から掲載中止の通告を受けて10年続いたコラムは他の人に変わってしまった。高島さん自身も、あとがきに、「なんでや…

『漢語の知識』 一海知義 岩波ジュニア新書25

『漢語の知識』 一海知義 岩波ジュニア新書25 内田義彦先生の『読書と社会科学』岩波新書(Ⅲ・創造現場の社会科学 1・日常語で見えるもの)のなかで一海先生の『漢語の知識』が掲載されており、また、先生から一海先生のことを「こわい人ですね」と聞いて…

『シェエラザ-ド』・浅田次郎

『シェエラザ-ド』・浅田次郎 浅田次郎の10年ほど前のベストセラ-の一冊である。「シェエラザ-ド」とは変わった題名と、何気なく手にとってぱらぱらとめくっていると、昭和20年台湾海峡に沈んだ「弥勒丸」、森田船長・・・これは日本郵船の「阿波丸」…

『海も暮れきる』 吉村昭

『海も暮れきる』 吉村昭 小説家の吉村昭が自由律の俳人尾崎放哉が、小豆島の南郷庵の庵守となり、その死をむかえる八ヶ月の間という、地域、日月を限定して昭和55年に描き上げた一冊。 吉村昭の本は『戦艦武蔵』をはじめとして数あるが、この『海も暮れき…

『暗い絵』・野間宏

『暗い絵』・野間宏 昭和48年・・・大学1年生の冬、アパ-トの近くに住む画家の田中岑(第一回安井賞受賞)のもとに、同じ香川県だからと強引に教え子?となった私は、ブリュ-ゲルの絵の世界に引き込まれていた。 縁あって1年生ながら内田義彦先生(経…

閑話ー屋島再び・初舞台

パンフレットに、私は小豆島の農村歌舞伎のことを書きましたが、小説家の瀬戸内寂聴さんが「神秘なめぐりあい」という題で、木下民話劇のことを書いていました。 せっかくパンフに書いたのだから、篝火の中での芝居か・・・出演してみようと思い、ちょうどエ…

閑話-屋島再び

源平の古戦場として知られる屋島山麓の地に四国民家博物館という四国各地から古い民家を移築復原した野外博物館があります。昭和51年に開設して以来、社会教育の場また観光スポットとして、「四国村」の愛称で親しまれています。自然あふれる約50,000m2の敷…