『図書500号記念』・岩波書店

イメージ 1
                                           『図書500号記念』・岩波書店
 
 1990年だから20年前のこと。職場の文学好きの上司から、「岩波書店の図書が500号を記念して『本のある生活』というテ-マでエッセイを募集している。興味があれば書いてみたら」と勧められた。
 仕事を辞めて書道で身を立てられないかと思っていたテストパイロットは、エッセイなど書いたことはなく、岩波書店は知っているものの『図書』という小冊子など、知るよしもなかった。
 なにしろ、『図書』なるものを見に図書館を訪れたところ、司書の人より、「岩波の図書ですか、ありますけれども、テストパイロットさんが・・・」と不思議そうな顔をして言われたぐらいである。
 ただ、大学を卒業しても師事していた内田義彦先生(経済学者・社会思想史家)には、せっせと手紙を書いていた。
 前年の三月に内田先生と永の別れをしていたテストパイロットは、内田先生の思い出と父親の天気予報の見方をオ-バ-ラップさせ、「本は読むべし 読まれるべからず」というタイトルを付けて岩波書店に送った。
 書いたものを岩波に送ったことなど忘れていたある日、職場に岩波書店から、図書にテストパイロットの拙文を掲載するという電話がかかってきた。
 図書に拙文が掲載されると、内田先生の友人で日本政治思想史の丸山真男(東大名誉教授)、石田雄(東大名誉教授)、長幸男(元東京外大学長)、木下順二(劇作家)、吉村昭(小説家)など諸先生方をはじめとして色々な方から葉書や手紙をいただいた。また、高松商業などをはじめとした県下の高校の国語の先生から、生徒に読ませたいのでコピ-して配布してもよろしいかという確認など、かなりの反響があった。
 丸山真男先生から、「在家仏教と学問」について教えていただきたい、と恐れ多い葉書をいただいたが、テストパイロットは尻尾を巻いてお断りした。
 今と違って、パソコンなどなく、原稿用紙に手書き、間違った箇所に紙を貼り、できあがった下書きを清書して送った。
 それだけに、文章を手が覚えている。
イメージ 2