『わたしの中のもう一人のわたし』・渡辺淳一

                             『わたしの中の、もう一人のわたし』・渡辺淳一
 
イメージ 1
 
 15年程前、小豆島で文藝春秋の講演会を開催したことがある。講師は、小説家の渡辺淳一林真理子さん。
 楽屋で渡辺先生と小豆島についてとりとめのない話をしていた時のこと、テストパイロットは渡辺先生に、「渡辺先生のように女の人を描くには、どうすればいいのですか」と失礼を顧みず愚問を投げかけた。
 すると渡辺先生から、「テストパイロットさんは、恋愛経験が豊富ですか」と逆にたずねられた。
「ほとんどありません」と答えると、「不倫をしたことがありますか」と間髪を入れずたずねられた。
 テストパイロットが、「不倫、そんなもの、したことないです」と答えると、「女の人には三つの顔があります。女としての顔、妻としての顔、母としての顔があります。その顔がわからなければ、私の書いているような小説は書けません。テストパイロットさんのもう一つの自分の顔を書けば、小説になります」と言われた。
 
イメージ 2
 
「渡辺先生、自分のもう一つの顔は、物凄くスケベで変態で、人を殺したいと思ったりと、そのようなものを書けば小豆島におれなくなります」と答えると、渡辺先生は「それを書くんです。書けば一冊の小説となります」と、テストパイロットが用意していた色紙に、『わたしの中の、もう一人のわたし』と筆を走らせた。
失楽園』を執筆中のことであった・・・