壺井栄さん、『桃栗三年柿八年 柚子の大馬鹿十八年』
桃栗三年
柿八年
柚子の大馬鹿
十八年
小豆島の小さな分教場で、若いおなご先生と12人の教え子との師弟愛と戦争反対を描いた名作「二十四の瞳」で有名な小豆島出身の作家、壺井栄さんが好んで書いた、「桃栗三年柿八年、柚子の大馬鹿十八年」の碑文である。
桃や栗は三年で、柿は八年で実を付けることができる。しかし、柚子は18年もかかる。また、桃や栗、柿の実は、それだけで食することができ、甘みで人を喜ばす。柚子は、酸味と香りで味を引き立てるものの、主役には決してなれない・・・そして、大馬鹿とよばれながらも、柚子の木には、鋭いトゲがある。
プロレタリア作家の壺井栄さんが、人から揮毫を求められると、この里謡を好んで書いたのがわかるような気がする。
テストパイロットは、かつて小豆島の人が、「あいつはアカだ、アカだ、共産党だ」と白眼視し、石をもって壺井栄さんやその夫である繁治、黒島伝治を村から、島から追い出したということを、そしてその壺井栄さんとその作品から小豆島は計り知れない恩恵をうけているということを、決して忘れてはならない、と思っている。
生家にほど近い坂手の小高い丘に設けられた壺井栄文学碑からは、穏やかな瀬戸内海の光景が目の前に広がる。
テストパイロットは、雲ひとつ無い、おだやかな冬の瀬戸の海と島々をしばし眺めてしまいました。
ということで、壺井栄文学碑から帰ると、家の裏庭になっている柚子をとってきました。
今年の柚子は、アホウほど実を付けた去年を忘れたように、実の数は少ないものの、形は一回り大きい。肥料も消毒もしないのですが、毎年楽しませてくれまいす。
でも、油断をすると、鋭いトゲで痛い思いをします。
皿は、明治の印判手の伊万里の尺皿です。鱸やコチなど薄つくりの刺身を盛ると、藍(コバルト)の色がいっそう映えます。