なつかしの『おはなはん』小豆島公演
なつかしの『おはなはん』小豆島公演
こぞごぞと押し入れの整理をしていると、かつて手がけた『おはなはん』小豆島公演のポスターやチラシ、写真などが出てきた。
『おはなはん』といっても、今の若い人は知らないと思うが、テストパイロットが中学1年生の時だったと思う、NHKの、今でいう朝ドラで「チャンチャチャチャン・・・チャンチャチャチャン・・・」というメロディーとともに放映され、絶大な人気を博した樫山文枝さんを世に出した、まあ、55歳以上の人ならば誰しもが知っているテレビドラマである。
演劇やコンサ-トを聴きにいくのには、船で高松まで行かねばならない小豆島で、本物の舞台芸術にふれ合えたらと思っていた矢先、劇団民藝から北林谷栄さん主演の『楢山節考 』(ならやまぶしこう) 深沢七郎作を、肥土山の農村歌舞伎舞台(国指定重要有形民俗文化財)でやりませんか、という話が舞い込んできた。
大学時代の恩師内田義彦先生は、経済学者で社会思想史家であったが、親友が劇作家の木下順二、下村正夫さんというぐらいに演劇の造詣が深く、山本安英の会の主要メンバーであったことから、『楢山節考 』の話が舞い込んできたのだが、過疎と高齢化の小豆島で、いきなり、『楢山節考 』では・・・農村歌舞伎の舞台でやるのは、確かにおもしろいのだが・・・と躊躇していると、それならば今度樫山さんと米倉さんとで 『おはなはん』を東京・京都・大阪・神戸でやるから、神戸の後に小豆島へ行こうかという話がとんとん拍子に進み、平成6年4月29日、小豆島土庄町公演が実現した。
久しぶりの舞台芸術に、854席の公民館は満席、小豆島の人たちに楽しいひとときを過ごしてもらいましたが、なにしろ先立つものがない。破格のギャラで来たもらったため勧進元となったテストパイロットは、舞台設営、大道具・小道具の搬出、搬入、宿舎、船、弁当の手配と大忙しであった。
民藝の総帥、宇野重吉さんが亡くなったばかりであり、楽屋では陰膳を供えていた。
公演が無事終わり、ホテルで成蹊大学の江藤文夫さん、樫山さん、斉藤美和さんと酒を飲みながら夜中の2時頃まで、台詞の間(ま)について話した(本当は疲れて眠たかった)のも懐かしい思い出である。