江戸の職人技・ふすまの引き手
江戸の職人技・ふすまの引き手
このふすまの引き手は、もう20年近く前に、邸宅が町指定文化財、庭の蘇鉄が県指定文化財という、江戸末から明治のはじめにかけて西日本屈指の材木商であった末裔の方から、「テストパイロットさん、将来茶室を建てるときにお使い下さい」と一対手渡されたものである。
日々の生活に追われている貧乏なテストパイロットにとって、茶室など夢物語、この引き手が使われることはないであろう。しかし、時々、心が疲れたとき、このふすまの引き手をとりだしてながめている。
裏は七宝焼きの跡が歴然、江戸の職人の技か、鉄をなんとも優美に、さりげなく曲げている。たかが引き手と言ってしまえばそれまでだが、この引き手には江戸の職人の技と意地が生きていると思うのは、わたしだけであろうか・・・